◆ヴィクトリアンジュエリー(1837-1901年)
ヴィクトリアンジュエリーは、1837年から1901年のヴィクトリア女王の治世を象徴する宝飾品で、大きく三つの時期に分けられます。
初期(1837-1860年頃)
ロマンティックなテーマが特徴で、自然や愛の象徴がモチーフとして使用されました。例えば、花、葉、鳥、ハート、蛇などが人気で、蛇は永遠の愛を象徴しました。カメオやブローチがこの時期の代表的なジュエリーであり、ゴールドが主な素材として用いられました。
中期(1860-1880年頃)
ヴィクトリア女王が夫アルバート公を失ったことで、喪のジュエリーが流行しました。この時期には黒いジェット、オニキス、エナメルなどが使われ、ゴシックやルネサンスの影響を受けたデザインが特徴です。また、メメント・モリ(死を想え)のテーマを持つジュエリーも多く、髪の毛を使ったジュエリーや、遺品を封入したロケットが作られました。
後期(1880-1901年)
産業革命の影響で、ジュエリーの生産が機械化され、より手に入りやすくなりました。デザインはより豪華になり、ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルドといった高価な宝石が多用されました。真珠も人気があり、ペンダントやブローチに多く使われました。この時期にはまた、エジプトや日本、インドなど、異国文化の影響を受けたデザインも登場し、多様なスタイルが見られるようになりました。
ヴィクトリアンジュエリーは、その時代の社会的、文化的背景を反映し、愛や喪失、記憶といった人間の感情を深く表現しています。宝飾品は単なる装飾品にとどまらず、個々の人生や時代の物語を伝える手段としても重要な役割を果たしました。
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